梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

ニコラス・クリストフの中文ブログ

 6月20日付のNYTでニコラス・クリストフ(中国名は紀思道)が、中国のネット規制についてのコラムを書いている(下記リンクは有料)。

In China It's ******* vs. Netizens

 その主張は「中国当局は必死になってネット規制を強化しようとしているが、いまや1億2000万人に達し真実を求める中国ネチズンを全て押さえ込むのは不可能だろう」という定番の見解といっていいもので、まあ特に面白いものではない。

 ただちょっと面白いのは、「ネットの規制がどこまで厳密に行われているか」を試す実験台として、彼自身が中文のブログを解説して当局の規制に引っかかりそうな内容のエントリを次々に発表していることだ。

To test the limits of the Internet in China, I started a couple of Chinese blogs — in which I huff and puff as outrageously as I can.


http://blog.sina.com.cn/u/1238333873
http://jisidao.blog.sohu.com.

で、上の二つががその中文のブログなのだが、そのうち後者の新浪網のほうの14日の開設以来のエントリのタイトルはこんな感じ。

・赵岩无罪
・中国领导执政应该更加透明
・敏感词
・法轮功为什么不能说?

 ・・というわけで完全に当局に対して喧嘩売ってますな(赵岩氏は現在中国当局に逮捕・拘束されているNYTの中国人スタッフ。NYTは彼の釈放を繰り返し紙面で訴えている)。後者の捜狐のブログの方も多分同じ調子だったと見えて、こちらの方は早くもブログごと削除されている。新浪網の方もいつまで続くことやら。

 さて、僕としてはネット規制の問題は、クリストフのいうように真実を求める市民vs.それを規制しようとする当局、という古典的な構図からだけではなく、大多数の市民にとっての「見たくない現実」を政府がいわば「代行」して隠してあげる、という側面からも考えられる必要があるのではないかと思っている。まだそれほど考えがまとまっているわけではないのだけど。

 ただ、一方でクリストフのように、愚直なまでにみずからの「正さ」を信じて中国政府の批判を繰り返すことができる人は、それはそれでやはり偉いのではないかと思いはじめてもいる。「偉い」というより「うらやましい」といったほうが正確かな。