梶ピエールのブログ

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1820―1950年のグローバリゼーションと経済格差

 20年後のグローバリゼーションと経済格差についてのSF的考察が巷間を賑わせているようですが、このたび数量経済史の泰斗ウィリアムソンが、200年前からのグローバリゼーションの歴史とその世界経済に与えた影響について考察したコンパクトだが中身の濃そうな本が出ました。

Globalization and the Poor Periphery before 1950 (Ohlin Lectures)

Globalization and the Poor Periphery before 1950 (Ohlin Lectures)

 とりあえずアマゾンに掲載されている紹介文を訳出してみます。

 本書の中でジェフリー・ウィリアムソンは、経済学者と歴史家という二つのレンズを通じてグローバリゼーションを仔細に眺め、19世紀から20世紀前半にかけてのグローバリゼーションが、工業化に遅れをとった貧しい国々に対してどのような経済的インパクトを与えたかについて分析している。ウィリアムソンによれば、北西ヨーロッパの中心国およびその海外植民地における工業化は、世界規模での輸送手段の革命と結びついて、東・南ヨーロッパ、中東、アフリカ、アジア、そしてラテンアメリカなどのより貧しい周縁国におけるグローバリズムに対する反動的な傾向をもたらしたのだった。

 「最初のグローバルな世紀」である1820年から1913年にかけて、また反グローバリズム的な自給自足経済の時代である1914年から1940年の戦間期にも、新しい輸送交通手段は世界の財市場を統合し、中心国と周縁国との間における貿易ブームをもたらした。工業製品の価格低下をもたらした急速な生産性の上昇によって、周縁国で生産される一次産品に対する中心国の需要は急速に拡大した。しかしそのブームが終焉を迎えてからおよそ150年後、中心国と周縁国との間の生活水準の格差は、グローバリズムのサイクルが始まる時点よりも一層拡大していたのだった。ウィリアムソンによれば、周縁国は「世界経済の法則」に従ったのだという。ウィリアムソンによる過去15年間のグローバリゼーションに関する先駆的な仕事の手際のよい総括である本書は、周縁国に作用した「世界経済の法則」を実証的に記述し、またそれらの国における再分配および経済成長の成果を推計し、貿易政策の効果について考察を行っている。

参考: 
http://www.bk1.co.jp/product/2330967/review/275684