梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

アメリカの経済学者と移民問題

先日のエントリにトラックバックを送ってくださったhicksianさんのブログで紹介されていたが、グレゴリー・マンキューなど著名な経済学者も移民問題についてエントリを書いているようなので、とりあえずリンクしておきます。

Greg Mankiw's Blog  
http://gregmankiw.blogspot.com/2006/04/immigration.html

David Friedman
http://daviddfriedman.blogspot.com/2006/04/welfare-and-immigration-flip-side-of.html

 ほとんどの経済学者は、共同体主義的な立場から移民を排斥したり受け入れを拒否したりする動きには批判的だと思われるが、クルーグマンとマンキューのそれぞれの文章は経済学者の中における立場の違いを反映しているようで興味深い。つまり、クルーグマンが十分な社会保障や政治的権利を与える準備がない状態で安価な労働力として短期の移民を受け入れることに明確に反対の立場を示しているのに対し、マンキューはその点はあまり考慮していない感じで、ブッシュ政権が進めようとしている短期移民受け入れ政策(クルーグマンに言わせれば「ドバイへの道」を開こうとするもの)に対しても基本的に支持しているようだ。
 ただ面白いのは、両者ともこの問題を語るときにヨーロッパから移民してきた自らの祖父母(クルーグマン家はロシア、マンキュー家はウクライナ)の話を持ち出している点だ。マンキューはまた、シュライファー(ロシア)、ハート(イギリス)などやはりヨーロッパから移民してきたハーバードの同僚の存在について、移民の積極的な受け入れに肯定的な立場から言及している。
 どうもアメリカ人にとって、移民問題とは誰にとっても完全な他人事ではなく、何らかの思い入れをこめて語らずにはおれない問題であるようだ。