梶ピエールのブログ

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胡錦涛の対日政策

『中国研究月報』という、基本的に専門家しか読まない雑誌(http://wwwsoc.nii.ac.jp/ica/monthly/f-2005.htm)があるのだが、その最新号(6月号)でこの手の学術誌では珍しく反日に関する特集を組んでいた(詳しい内容はリンク先をご覧ください)。

 この中でなんといっても目玉は趙宏偉氏の論考「胡錦涛の対日政策 小泉を相手にせず」だろう。ここで趙氏は、そもそも胡錦涛は「対日新思考」が取りざたされた頃から歴史問題と台湾問題という「二原則」の堅持こそが日中関係が成り立つ政治基礎であるという姿勢を明確に示しており、彼はもともと対日融和派なのだという見方を一蹴する。そして、この強硬姿勢は、靖国などでさんざん挑発的な言動を繰り返し、「二原則」を堅持していこうとする姿勢の一向に見えない小泉内閣をもはや「相手にせず」、その代わりにむしろ一部の政党や政治家と民間レベルのパイプを築くことに重点を置く、というところまできているという。例の呉儀のドタキャン事件は、「もうあなたを相手にしませんよ」という態度の明確なシグナルだったというのだ。
 趙氏はまた、このような「原則」を認めようとしない相手側政府を「相手にせず」、民間ルートでの懐柔を図る、という態度は、中国政府が台湾の陳水扁政権ならびに国民党などの野党に対して示しているものと基本的に同じだと指摘している。

 この現状認識は日本にとって大変厳しいものであるのは間違いないが、確かにこのように考えればいろいろなことのつじつまは合うかもしれない。これまでこういう視点から中国政府の対日政策を分析した人はいるのだろうか。僕自身は中国研究などやっていながらこういう政局分析のようなことは非常に苦手なので、詳しい方のご意見をお待ちしたい。