保護者面談会に出席のため福岡に日帰りで向かう新幹線の中で読む。
反グローバリズムの思想に対して真っ向から思想戦を挑むというよりは、「せめてこの程度の事実認識の誤りくらいは正しておいてください」といった感じで、むしろその「勉強不足」をつくという性格が強いように思われる。そういう意味では議論の「底を挙げる」ための「叩き台」としてグローバリゼーション批判派にも広く読まれるべき書物だろう。バグワティ自身の経済思想については、絵所秀紀『開発経済学とインド―独立後インドの経済思想』ISBN:4535552673 の方が参考になるかもしれない。
バグワッティが自由貿易を推奨する一方で資本の自由化には一貫して慎重な態度をとっているのは有名な話だが、そのほかにも医薬品などの開発における大企業による過剰な知的所有権の追求に警鐘をならず、いわばレッシグ的な見解を主張しているところは興味深かった。
しかし、「そこそこの金持ちが100人いても自分の消費を追及するだけだが、一人のビル・ゲイツがいた場合自分ひとりでは絶対に資産を使いきれないので必ず社会事業のために使おうとする、だから後者を生み出すような極端な不平等の方が、中途半端な不平等よりも社会的には望ましい」というロジック(112ページ)はいかがなものか。