梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

ウルケシをウアルカイシと呼ぶ勿れ。

 さて、趙紫陽が死んだわけだが、日ごろ特に政治問題を熱心にヲチしているわけでもないし、17日付けの各新聞を読み比べてその扱い方の違いが興味深かったくらい(産経は「信念貫いた真の改革者」と偉人扱い、読売は中国批判モード全開、朝日・毎日はビミョー)でこの件について取り立てて言いたいことはない。ただ、一つだけ気になったというか言っておきたいのは、この件で各紙がコメントを掲載していた、王丹などと並ぶ天安門事件学生運動のリーダーの一人だったウルケシウアルカイシ)氏のことだ。

 このウルケシという人は、事件の後フランスやアメリカへの亡命を経て台湾で実業家になっている。王丹などに比べてどうも単なる目立ちがり屋というかもともとそんなにモノを考えている人ではなく、長らく世界のマスコミからも忘れ去られていたのだが、最近になって陳水扁が僅差で勝利した台湾総統選の結果に反・民進党の立場から抗議してハンストを行うなど(よっぽど断食が好きな人らしい)、目的はよくわからないけどまたマスコミへの露出度が上がってきたので、各紙もコメントが取りやすかったのだろう。だがこの際彼自身のことはどうでもいい。ここで問題にしたいのは各紙がそのまま使っていた「ウアルカイシ」という読み方についてである。

 ウルケシ氏は中国北西部の新疆出身のウイグル族であり「ウルケシ」というのは、彼の名前のウイグル語での発音に最も近いと思われるカタカナ表記である。で、問題の「ウアルカイシ」というのは、彼の名前の漢字表記「吾爾開希」の中国語(北京官話)読み(wu-er-kai-xi)をさらにカタカナ表記したものである。(詳しくはhttp://www2.big.or.jp/~yabuki/doc/pe910088.htm参照)
 しかし、これはどう考えてもおかしい。漢字しかない中国語ではやむ終えないとはいえ、日本ではカタナという表記方法がある以上あくまでも民族の言葉に近い発音で紹介されるべきである。たとえば今年の正月からNHK新シルクロードが始まったが、カシュガルとかホータンとかいう新疆の地名を、その中国語読みをそのまま使って「カーシィー」とか「フーディエン」とか言わないでしょ?地名がそうなら少数民族の人名についても同じように扱うべきである。

 ウイグル人の分離独立運動をめぐる政治的な問題のことはひとまずおいておくとしても、もともと無理やり当てはめた漢字の中国読みをさらに声調を無視してカタカナ表記したのでははっきり言って何がなんだかわからず、ウイグル人固有の文化に対する理解と尊重を著しく欠いているとしか言いようがない。なんとなく、シルクロードへの関心は高くてもそこに住むウイグル人の問題にはほとんど関心がない日本の現状を思い知らされるようで少々暗澹とする。
 っていうか正直なところ僕も彼の名前のウイグル語読みを知ったのは比較的最近のことだし、ましてや中国の専門家でもなければ上記のようなことは知りようもないのだから、やはりマスコミにはきちんと説明した上でウイグル語読みのほうを使ってもらいたい。いっちょ抗議のメールでも送ってみるか。っていうか権威のある人がもう少しちゃんとこういった「誤り」を正してほしいよな。