梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

おとなしいアメリカ人

 さて旅行中に、『SIGHT』別冊の「日本一怖いブックレビュー」で藤原帰一が取り上げていたグレアム・グリーン『おとなしいアメリカ人』を恥ずかしながら初めて読む。こんな傑作をこれまで読んでなかったとは勝ち負けで言うと負け、というか1950年代の段階であんなものが書けるとは、すごいの一言。この小説は藤原さんがそうしているように一種の「アメリカ論」の文脈で読まれることが多いのだと思うが、僕はむしろ最近(ひそかに)考えてきた、「アジア」に対してアイロニカルな態度をとることの有効性、という問題に見事に具体的な形を与えてくれる作品として読んだ。というわけで今後しばらく、「アジアとの関わり」と「アイロニー」との関係について少しづつ考えてみたい。