梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

2007-08-01から1ヶ月間の記事一覧

消費者運動が強める多国籍企業の影響力

日本では、企業の勝手にさせとくととかく汚いことをして金を稼ごうとするので、「正義」を実現するにはお上が適度に規制したほうがよい、という観念がまだ強い、ような気がする。 しかし、多くの発展途上国では、多少とも名の通った多国籍企業の方が腐敗しき…

金融NPOとか社会起業家とか

金融NPO―新しいお金の流れをつくる (岩波新書)作者: 藤井良広出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2007/07/20メディア: 新書購入: 2人 クリック: 38回この商品を含むブログ (28件) を見る 優れた概説書&ルポルタージュだと思います。詳しくは韓リフ先生id:tan…

ブラインドサイト

http://www.blindsight-movie.com/ チベットを舞台にした、いかにも欧米人が好きそうな、ヒューマニズムにあふれる映画というのは本来あまり好きじゃないのだが・・この映画には正直参りました。今までチベット・ヒマラヤを舞台にした映画を10本以上観てきた…

食の安全とグローバリゼーション

NHK『クローズアップ現代』でここ2日間ほど中国製食品の安全性やコピー商品という今「旬」の話題をテーマに取り上げていたが、さすがにしっかりしたつくりの番組だった。中国性の食品に問題のあるものが多いことはもはや誰でも知っていることで、そのことを…

荻原重秀と張之洞

今年に入って、日本の貨幣・金融政策史をテーマにした優れた啓蒙書がいくつか出版されている。 勘定奉行 荻原重秀の生涯 ―新井白石が嫉妬した天才経済官僚 (集英社新書)作者: 村井淳志出版社/メーカー: 集英社発売日: 2007/03/16メディア: 新書購入: 2人 ク…

北京の一元コイン

北京と上海をそれぞれ何度か訪れたことのあるものなら誰しも気付くことであるが、この両メガポリスではコインの流通の度合いが全く異なる。北京では一元(約16円)以下の小額でもコインを使わず、ぼろぼろに磨り減った紙幣を使うことが一般的だ。特に一元硬…

8月のニュルンベルグ

仮に百歩譲って「8月→終戦→戦争責任→東京裁判」という連想から東京裁判を題材にしたドキュメンタリーがこの時期に放送されるのはまあ理解できるとしても(極東軍事裁判の判決は11月)、ニュルンベルグ裁判やアウシュビッツ裁判についてまでも8月に考えなけ…

牛肉拉麺の経済学

8月の北京はまだ暑い。また、話には聞いていたがタクシーが非常につかまりにくい。仕方がないので炎天下の中うろうろしているうちに怪我の功名というのか、気がついたことがいくつかある。 今回はもっぱら大学の図書館などで調べ物をしているので、昼は学食…

もう一つの『グアンタナモ、僕達が見た真実』

ドキュメンタリー・マニアの僕としては、「再現映像」というとどうも『そのとき歴史が動いた』とかを連想してしまってあまりまともに見る気になれない。それが「悲惨で、筆舌に尽くしがたい」出来事を扱ったものであるならなおさらだ。例えば『ショアー』に…

8月だからしょうがない

先日の参議院選挙の結果に、久間前防衛相の「しょうがない」発言がどの程度影響を与えたのかは分からない。ただ、上のエントリとのからみでいえば、あの一件は日本社会における「8月ジャーナリズム」の「しぶとさ」「相対化の難しさ」を示すものとして解釈で…

佐藤卓巳・孫安石編『東アジアの終戦記念日』ちくま新書

前著『八月十五日の神話』はあちこちで話題になった力作だったが、日本の「8月15日神話」と対比されるべき周辺国の終戦記念日の説明について、若干の疑問点も提起されていた(id:kaikaji:20050912)。恐らくこういった批判を踏まえてだろう、佐藤卓巳氏が戦…

追記

池田信夫先生ご推奨。

小林英夫『日中戦争』講談社現代新書

さて、前に加藤陽子さんの本を紹介してから随分間が開いてしまったが、また日中戦争がらみで。といってもこちらは一応満州事変からの動きもフォローされているものの、その焦点はどちらかといえば開戦から戦線が次第に泥沼化していく過程に当てられている。…