梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

いただきもの

左派・リベラル派が勝つための経済政策作戦会議

左派・リベラル派が勝つための経済政策作戦会議

 松尾匡さんが共同代表者を務める「ひとびとの経済政策研究会」の中でまとめた政策マニフェストの内容に基づいて作られたタイトル通りの政策パンフレットです。これも松尾さんが代表を務める「薔薇マークキャンペーン」の推奨する政策パッケージがコンパクトにまとめられています。

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 前月の記事http://kaikaji.hatenablog.com/entry/2019/06/14/125102で「月刊岡本隆司」ではないか、と書いたところなんと本当に新刊をお送りいただいてしまいました。「中国史をできるだけ広くカバーし、世界史とつなげて学ぶ」というのは現在の岡本さんが取り組んでおられるお仕事のコアになる部分だと思います。

お仕事のお知らせ

7月8日(月)発売の、『週刊東洋経済』7月13日号のコラム「中国動態」に、「中国は反緊縮の実践例?天安門事件前夜の教訓」という記事を寄稿しました。

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日本でも消費増税が争点となった参議院選挙を控え、反緊縮の機運が高まる中で、MMT(現代貨幣理論)が注目を集めています。その中で、下記の記事のように 「MMTのモデルに最も近いのは中国」(日本がそうだ、という議論もありますがこれは明確に誤りなので)といった見解がちらほら見られるようになっています。

jp.wsj.com

 現在、MMTの政治経済モデルに完全に沿った国は存在しないが、最も近いのは中国である。ミッチェル教授は、中国が「自国通貨の独占的な供給者として得られる機会」を示しており、その結果として「公共の目的を追求するために財政赤字を計上する」ことが可能になっていると語る。1989年の民主化運動以来、共産党は国有銀行や地方政府、国有企業への命令を通じて完全雇用を維持してきた。同時に中国政府は、与信規制、土地の差し押さえ、そして中国の研究者であるチン・フイ氏が言うところの「人権の乏しさという比較優位性」によってインフレ率を抑制している。

 こうした政策の長期的な結果として、投資が促進され、消費がその犠牲となった。これによりゴーストシティーが生まれ、生産能力が過剰となり、貧困が広がる中で極度の汚染が発生している。人々を働かせるための仕事を探すのは簡単だが、働かせる価値がある仕事を探すのは難しい。不経済な企業を閉鎖していれば、短期的には失業率が上昇して無駄が増えただろうが、長い目で見た場合の無駄を減らすことができただろう。

 しかし、この見解は、例えばリーマンショック後に行われた景気刺激策のための投資が財政赤字を計上することではなく、「融資プラットフォーム」と呼ばれる地方政府主導で設立された民間のダミー会社の借り入れや、地方政府の土地使用権の売却資金によってまかなわれた、という点や、1990年代後半の国有企業改革によって大量の「下崗」(リストラ)された労働者を生み出したことを無視しています。『「反緊縮」!宣言』でも書いたことですが、この意味で天安門事件後の中国経済の運営は基本的に新自由主義的であると私は考えています。

「反緊縮! 」宣言

「反緊縮! 」宣言


 「反緊縮」的な経済政策の実践例として中国経済を見るならば、天安門事件より前の趙紫陽の経済政策にまでさかのぼる必要がある、というのがこのコラムの趣旨です。もっとも短いコラムでは十分に論旨が展開できたとは言いがたいので、このトピックについては機会があればまた別の媒体などで詳しく論じたいと考えています。

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 岡本隆司さんの名著『中国「反日」の源流 (講談社選書メチエ)』(講談社選書メチエ)の増補版が講談社学術文庫入りしたようで、早速1冊お贈りいただきました。岡本さんには、前回立て続けにご著書を送りいただいてからさらに東洋文庫より出版されたA World History of Suzerainty(検索しても出てきません・・)という英語の書籍もお贈りいただいているので、まさに「月刊岡本隆司」を購読しているような錯覚に陥ります。
 今回の増補版は五百旗頭薫さんが書かれている解説が秀逸なので、引用しておきます。

 岡本史学が、そもそも聖戦(ジハード)ではないか。皮肉や揶揄ではない。筆者の不満は、何よりも自分自身に厳しく向けられており、聖性を帯びている。
 その聖戦の熾烈さに比べれば、今の日中関係も生易しく見えてくる。何より恐ろしいことに、生身の岡本隆司は端正で快活でフレンドリーなのである。本書の補論は、京都弁こそ再現されていないものの、生身の語り口をうかがわせてくれる復習教材である。
本書を復刊したことは、何を意味するのか。予感にもならぬ憶測だが、次の展開を考え始めているのかもしれない。

 

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新全体主義の思想史:コロンビア大学現代中国講義

新全体主義の思想史:コロンビア大学現代中国講義

 訳者の方々からご恵投いただきました。先日天安門事件30周年の記念シンポジウムで来日されていたコロンビア大学教授の張博樹氏による現代中国論の集大成とも言ってよい著作です。今後の現代中国を論じる上で必読の文献になっていくであろう力作だと思います。

お仕事のお知らせ

6月2日(月)発売の、『週刊東洋経済』6月8日号のコラム「中国動態」に、「ごみの分別でポイント付与ビッグデータで社会問題解決」という記事を寄稿しました。

premium.toyokeizai.net

 前回の同コラムhttps://premium.toyokeizai.net/articles/-/20696]で、地方政府が民間会社と提携して、市民のさまざまな行動を評価して「スコアづけ」する動きがあることを紹介しましたが。このようなスコアづけでなくても、市民からのデータ収集を通じて公共性を実現しようとする試みは、中国の各地において進んでいます。その1つの例として、民間会社と提携してごみの分別収集を行っている江蘇省南京市の試みを紹介しました。

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11通の手紙

11通の手紙


 著者の及川さんより明治大学で開催された天安門事件30周年のシンポジウムで直接いただきました。長年劉暁波の言説を追ってこられた及川さんの中国および民主化運動に対する思いが、創作書簡の形でつづられています。