梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

お仕事のお知らせ

 3月12日付の『日本経済新聞』「複眼OPINION」欄に、「減速する中国経済」に関するインタビュー記事が掲載されました(有料記事)。私は「インフレ目標、実行に注目」というタイトルで、政府が景気刺激策に舵を切る中で、より洗練された財政・金融政策の導入が進むのではないかという見通しを示しました。
www.nikkei.com

 注目すべきは物価水準の目標を3%前後に設定した点。2月の消費者物価指数(CPI)は前年比1.5%の上昇にとどまっており、目標まではかなり遠い。大都市の住宅価格が下落傾向にあるなどデフレ懸念が強まっているが、中国はインフレターゲット的な政策の導入で対応していく可能性があるのではないか。

全国人民代表大会全人代)開幕の少し前、中国財政省の人物から「国債中央銀行が購入し、国債をマネタイズ(貨幣化)する形で景気刺激策をしていく必要がある」との発言が出た。日本の金融緩和を意識しているとみられる。中国はアベノミクスなど各国の金融政策や、米プリンストン大学クリストファー・シムズ教授が提唱した「物価水準の財政理論」(シムズ理論)などを研究している。

著名エコノミストの余永定氏は中国メディアに「財政と金融政策を一体化する必要があり、財政赤字国内総生産GDP)比3%の大枠にとどめなくてもよい」と盛んに書いていた。活動報告は3%の大枠を守るとしたが、赤字上限は0.2ポイント拡大して2.8%になり、債券発行を増やす方針も示された。米中対立がソフトランディングし、財政と金融が一体化した景気刺激策をとれば物価上昇が起こり、年内に景気を回復軌道に乗せるのは難しくないだろう。