梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

イリハム・トフティ氏の解放を求める署名運動

 7月5日のウルムチの事件に関しては、その後日本のメディアも積極的に独自の取材などを行っているが、実態については依然として未解明の点があまりに多い。

 その中で、日本のメディアではほとんど報じられてないが重要な動きがあった。現在中央民族大学教授であり、ウェブサイト「ウイグル・オンライン*1」の創設者であるイリハム・トフティ氏がウェブサイトで民族対立を煽る情報を流したという疑いで当局に身柄を拘束されたと伝えられており、それに対してかの「08憲章」の署名メンバーが中心となり、当局にイリハム氏の開放を求めるアクションを起こしている。

 これについては、いつもながらsinpenzakkiさんの記事に詳しい。
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/45070f936c9ae91c55d814726cbd2efc
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/c80b4bcb2578a0244eda56ccd6126c23

 ちなみに「ステンレス鼠」とは、かつて中国政府を批判する記事を書いて当局に拘束されたこともある中国の有名ブロガーである。

 イリハム・トフティ氏は、今年の3月の全人代でヌリ・ベキリ新疆ウイグル自治区主席を批判する発言を行ったとして当局から尋問・警告を受けていた。今回のイリハム氏の拘束については、この問題も何らかの形で影響しているものと思われる。これについては以下のkokさんの記事に詳しい。
http://kok2.no-blog.jp/tengri/2009/03/ilhamtohti_sile.html
http://kok2.no-blog.jp/tengri/2009/03/rfa_ilihamtohti_6511.html

 イリハム氏については中国語で多くの記事が書かれており、それらはいずれも「彼こそは穏健派を代表するウイグル知識人」「漢人ウイグル人の融和に尽力した人物である」と評価する声が相次いでいる。彼のような実際の暴力事件とは何のかかわりも持たない、穏健派の知識人が拘束されねばならないところに、中国の民族問題をめぐる状況の深刻さが現れている。

 ネット上で検索すると、イリハム氏が新疆の経済状況について論じた講演の記録があちこちの中文サイトに転載されている。そこには政治的に過激な主張などは全くなく、開発の進む新疆において各民族がおかれた状況をあくまでも客観的に記述するものである。統計数字も豊富であり、基本的な状況を理解するのによいテキストであると思うので、中国語が読める人には特にお勧めしておきたい。
http://www.fyjs.cn/bbs/htm_data/169/0810/160907.html

*1:http://www.uighurbiz.net。/サイト自体は残っているがブログは閉鎖されているらしい。