梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

コリアーとサムラ

最底辺の10億人

最底辺の10億人

 読了しました。

 この本の重要さはすでに多くの人が指摘しているが、僕がこの本を読んで真っ先に思い浮かべたのは、昨年からNHKBS「世界のドキュメンタリー」に何度か登場した、シエラレオネ出身のジャーナリスト、ソリウス・サムラ氏のことだった。というのも、この本で上げられている最貧国の「4つの罠―紛争の罠、天然資源の罠、内陸国の罠、劣悪なガバナンスの罠―」こそ、サムラ氏がアフリカのさまざまな地域を訪れながら追求してきたテーマそのものだからだ。

 放映時のタイトルで言うと、たとえば「さまよえるスーダン難民」は「紛争の罠」に、「シエラレオネ 血塗られたダイヤ」は「天然資源の罠」に、「エチオピア 飢餓地帯を行く」は「内陸国の罠」に、そして先日ブログでも取り上げた「体験ルポ 賄賂(わいろ)社会の実態」は、「劣悪なガバナンスの罠」に、それぞれ直接かかわるものだった。この4つの罠にあと一つあえて付け加えるとしたら、「性感染症の罠」だろうか?これについてもサムラ氏は「ザンビア エイズ多発地帯を行く」という番組で、真っ向から取り組んでいる。
 サムラ氏の姿勢を簡単にまとめるなら、目の前の悲惨な現実がまずなによりも「アフリカ自身の問題」である、ということを厳しく見据えた上で、その上で先進国の人々に対して事態の正確な理解と必要なコミットメントを訴えかける、というものだろう。これはもちろん上述書の中でコリアーが示した姿勢と共鳴するものである。コリアー氏の著作も素晴らしいが、サムラ氏のドキュメンタリーも素晴らしい。というわけで、この本に感銘を受けた人はぜひBSアンテナをつけて再放送をチェックしましょうNHKは彼のドキュメンタリーをぜひ地上波でも放送すべきだ。