梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

やっぱり朝日が好き

 ここ数年はずっと朝日・産経・日経の三紙を購読して切り抜きを続けているのだが、最近は朝日新聞を開くのを楽しみにすることが多い。国際関係の特集記事、特に最近はアフリカ関連の記事に充実したものが多いからだ。アフリカ報道は他紙もそれなりに増えてはいるんだろうが(ちなみに産経はこっち方面は全然だめ)、やはり朝日は従来から地道に取り組んできた印象があり、一歩抜き出たものがあると思う。

 中国報道に関しても、5月26日から少数民族についての特集記事が3回に分けて掲載された(「奔流中国21・民族の相克」)が、幅広い立場の人々の声を伝える、かなりよく取材された記事という印象を受けた。

 たとえば26日付けの記事では、少数民族への優遇政策に対して反発したり、チベット人学生が自分達に危害を加えるかも知れない、というデマが広がり疑心暗鬼になっている漢人学生の心情が紹介されている。急速な経済成長が拡大する中でのこのようなネガティヴな感情のぶつけ合いは、現代ナショナリズムに特徴的な「享楽の盗み」、すなわち現在の「われわれ」が豊かな暮らしを送ることができないのは「やつら」がそれを盗み取っているからだ、という思考として理解できるかもしれない。(しかし、「享楽の盗み」をぐぐるこの記事がトップに来てしまうのは、われながらいかがなものかと思う)。

 もちろん、今回の地震による被害が、このようなネガティヴな感情を一時的に緩和する方向に働く可能はある。少なくとも地震による苦しみは「やつら」によってもたらされたものでないことは明らかだからだ。しかし、27日付けの記事で、献身的に救援活動に従事する人民解放軍が、同時に自分達を抑圧する存在でもあることへのチベット人住民の複雑な心情が紹介されているのを見ても、この点に関してあまり楽観的にはなれない、と改めて思う。

※追記: 以下の記事も参照のこと。
http://nna.jugem.jp/?eid=2585