梶ピエールのブログ

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鉄西区

 というわけで、新開地にある神戸アートビレッジセンターまで『鉄西区』第一部・第二部を見に行ってきたですよ。昨年の山形国際ドキュメンタリー映画際以来あちこちで上映会が行われているようで、観た感想をブログなどに書いている人もたくさんいるようなので、内容についてはそちらをご覧下さい。検索をかければいっぱい出てきます。

 ごく簡単に感想を述べると、現在の中国において「左翼」と呼べる立場がありうるとして、いわゆる「新左派」でもなくましてや「中国共産党」でもなく、この作品や『水没の前に』の監督のように、ハンディカムを片手に中国の現実に向き合おうとしている映像作家達こそがそこにもっとも近い場所にいるのではないか、という思いを新たにした、というところか。

 あと、この作品については「市場経済化による社会の急激な変化とそれに取り残される人々」を描いたもの、という理解が一般的かもしれない。だが、それはたぶん物事の半分しか見ていない。前にも指摘したことだが、この作品で描かれているのはまさに「デフレ下でシバキ主義的改革を強引に行うとどのようになるか」の見本のような情景だと言ってよい。たとえば、第二部の「街」で若者たちが仕事もなくぶらぶらしているのはその時期の中国が全体的に深刻なデフレに見舞われていたからで、景気がよければさっさと故郷に見切りをつけてどこかに働きに行っているはずである。

 その他いろいろと細かく突っ込みたいところはあるが、それはまた時間があれば。