梶ピエールのブログ

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8月だからしょうがない

  先日の参議院選挙の結果に、久間前防衛相の「しょうがない」発言がどの程度影響を与えたのかは分からない。ただ、上のエントリとのからみでいえば、あの一件は日本社会における「8月ジャーナリズム」の「しぶとさ」「相対化の難しさ」を示すものとして解釈できるのではないだろうか。
 いささかアイロニカルな言い方になるが、「8月9日」が決して近隣アジア諸国とは共有されない「国民の間で閉じられた記念日」であったからこそ、あの発言が安倍政権にとって大きな逆風の一つになる、という現象も起きたのではないだろうか。そう考えると、靖国参拝小泉人気を支えてきたという現象と、今回「しょうがない」発言が安倍政権の逆風となったという現象は、おそらくコインの裏表のような関係にあるのだ。

 その点で、先日発売された『諸君!』9月号掲載の柴山哲也氏の論考「久間前防衛相の「原爆発言」がGHQの呪いを解いた」は、一連の「発言」をめぐる騒ぎの中で、日本の世論に最も欠けているものはなにかを鋭く指摘したもので、立ち読みでもいいから一読の価値がある。
 ちなみに今月の『諸君!』は、これ以外にもアジアにおいて「反戦」や「人権」を語ることの難しさを考える上で刺激的な論考が多く、久しぶりに「買い」だと思います。