梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

ロバート・バロー、緑爺さんを語る(ついでに日銀についても少し)。

 昨日チラッとだけ触れた、1月30日付WJSに掲載されたロバート・バローによる緑爺さん評。なかなか読みごたえがある内容だったのでより詳しく紹介します。

 バロー氏は、この18年間、グリーンスパン爺が物価水準を安定させ、FRBの政策への信頼性を高めたことを高く評価する一方で、その政策自体は必ずしも裁量的なものではなく、むしろ「ルール重視政策」に極めて近いものであったことを強調する。

 すなわち、緑爺さんによる金利操作が結果的に望ましい結果をもたらしたのは、それが実際のインフレ率や実体経済変数の動向を一定の規則で反映したいわゆる「テイラー・ルール」に基づいたものであったことが大きい、というわけである(テイラー・ルールについてはこれを参照)。そして、「世界経済の皇帝」としての「イコン」にはまだなりえていないバーナンキ新議長が、引き続いてFRBの政策に対する信認を獲得するためには、緑爺さんのもとで必ずしもその方針が明確には示されてこなかったルール重視政策を、より透明で、明確な形をもったものにしていくことが必要であることを説く。

 その上でバロー氏は、「ケチャップ皇帝」バーナンキ新議長の下での今後の金利政策の動向について、次の三つの可能性を予測する。
 1.今後2回のFRB会合において金利を0.25%づつ上げ、その後4.75%の水準をずっと維持する。 
 2.近いうちに金利を4.50%から4.75%の水準にまで上げ、その後2007年以降利下げに転じる。これは、バロー自身のマクロ経済モデルに基づいた予想らしい。
 3.金利は4.50%をピークとしてそれ以上は上がらず、その後4%の水準まで下落する。これは長期債券市場の利回り曲線が非常に平坦であることから得られる予想である。

 さて、結局緑爺さんは最後に0.25%の利上げと言う置き土産を残して議長の座を去ったわけだが、これは上記の三つのシナリオのうちどの可能性が高いことを意味しているのだろうか。シナリオによっては日本経済にも影響を与えそうだが、全ては3月に新議長就任後初めて開催されるFRBの会合で明らかになるだろう。

 ちなみに、バロー氏はこの記事で、FRB、欧州中央銀とならんで日銀を、今後インフレターゲット政策を採用し、継続していく可能性のある中央銀行としてあげている(日銀はデフレ脱却後インフレターゲット政策に移行するかもしれないとされている)のだが、果たしてこの予測は現実のものとなるのであろうか。